Xさんが、八王子市内の居住用不動産を売却し、某県某市の中古マンションに買い替えるというお話。
八王子市内の居住用不動産にかかる登記は当職めが担当、某市の中古マンションについては、別の仲介が入っているが、Xさんは先生をご指名なので、直接Xさんとやり取りしてほしいという、仲介さんからのご依頼。
住み替えのため、Xさんは、すぐに中古マンションに入居したいとのご要望で、居住用不動産の決済の翌日に、当該中古マンションの決済を入れてほしいと。客付・元付の仲介さんには伝えてあると。
Xさん、客付・元付の仲介さんとご挨拶し、中古マンションの資料を送ってもらい準備を開始。
この時点で決済の2週間前を切っている。
登記情報を見ると、行政区画の変更のため、〇〇市→✕✕市→✕✕市△△区、と2度にわたり「敷地権の目的である土地の表示」が変更されており、4つの敷地権だけで12行の表示が。いきなり目がチカチカしてくる。
「敷地権の目的である土地の表示」は、
1 904番10
2 904番11
3 29番2
4 84番4
専有部分の建物の表示における「敷地権の表示」は、
1 所有権 100分の1
2 所有権 100分の1
3 所有権 100分の1
以上
・・・・・・・あれ、4がない。4は?
(脳みそフル回転中)
あ、4は、非敷地権か・・。
あれ、評価証明書、公課証明書、名寄帳にも、84番4がない。
調印済の売買契約書を見ると、
「敷地権の目的である土地の表示」は、4つ
「敷地権の表示」も、4つ
84番4も、敷地権の割合100分の1と書かれてある。
なんだこりゃ?えーこれおかしくない?
84番4は、敷地権化されてないよ。
なんだか理由はわからないけど、一棟の建物の敷地権は4つだけど、この専有部分の敷地権は3つだよ。
これ、敷地権化されてませんよ~。84番4の謄本、評価証明ありますか?
と、客付さんに聞いてみると、元付に聞いて確認させると。
元付さんから連絡頂くと、84番4については、
「市役所で、所有者の全部って名寄せとか請求したのに84番4がないから、聞いてみると84番4は他の人の名義になってるって言われたんですよ」
「僕も気になって、登記情報請求してみたんですけど、登記中で取れなかったんですよ」
「今も84番4の登記情報取ろうとしたんですけど、やっぱり登記中でした」と。
えー。
確認せずに契約したの。それはびつくり。
とにかく、事の重大さに気づいたようで、引き続き調査してみると。
こちらもこちらで調査してみますと、電話を切る。
まず、84番4の権利関係がどうなっているのか、謄本が取れないことには、見積も出せない。お話にならない。
とにかく、大急ぎで八王子支局認証係に、駆け込む。
かくかくしかじか・・・売買契約の権利欠缺につき損害賠償請求事案相当で緊急事案であ~る。至急、当該専有部分の敷地相当持分の一部事項証明書の開示された~し、云々。
すると、認証係の気の良いおばちゃんが、
「せんせー、これうちの管轄じゃないから、出せないのよ~。うちの管轄だったら、すぐ稟議にかけてもらって一部証明出せると思うんだけどぉ」
そうだ、ここは八王子だ。
事件は、〇〇市で起きていた。
事務所に戻り、あらためて専有部分の登記情報を見て考える。
(甲区)
1番 所有権移転 平成1年5月10日第◯号
原因 平成1年3月3日売買 所有者 A
2番 所有権移転 平成24年3月1日第◯号
原因 平成24年1月3日相続 所有者 B
3番 所有権移転 平成24年10月5日第◯号
原因 平成24年10月5日売買 所有者 C
84番4は他の人の名義になってるって、これ、もしかして、Cさんが買ったときにも、84番4が漏れてるんじゃないの?
もしかして、Aさんが死亡して、Bさんが相続登記を入れるとき、Bさんが本人申請でもして、そこから84番4が漏れてちゃったんじゃないの?
でも、Cさんへの売買のときに、司法書士が絡んでるんだから、84番4が漏れてるの気づくよな。
気づかない司法書士なんて、いな・・・。
いやいや、待て待て!!!
(乙区)
1番 抵当権設定 平成1年5月10日第〇号
原因 平成1年5月10日金銭消費貸借契約同日設定
抵当権者 住宅金融公庫
2番 1番抵当権抹消 平成24年10月5日第〇号
Aさん、融資受けてるじゃん!!しかも公庫の。
かくかくしかじか、CさんがBさんから買ったときの売買契約書を確認できませんか?
と、改めて元付さんに聞いてみる。
Cさんに、聞いてみますと。
しばらくして、元付さんから、Cさんに連絡して売買契約書を確認してもらったけど、84番4は書いてないようです、と。
そうなると、やっぱりBさんの相続登記の段階で、漏れてるくさいな。
でもなんで、Cさんのときの司法書士は漏らしちゃってるわけ?これは、やっちまったな。
「Cさんが買ったときの司法書士の名前聞いたんで、先生からこの司法書士に聞いてみてくれませんか?正直、僕よく分かってないんですよ。調査費用は、全部うちが払いますんでお願いします。」
いやこれ、真剣にまずいんじゃないの。その時の司法書士の名前と事務所、電話番号を聴き、調べてみると、お銀座のおマダム司法書士のようで。
地元でもない、お司法書士に聞いたところで、この特殊おマンションのことを聞いても、しょうがないんじゃないか。
それに、10年以上前の事件なんて記録廃棄してるだろうし、聞いたところで、すっとぼけるだろうし。聞いたところで、問題解決にならないと判断。
その間も、思い出したときに、84番4の登記情報を請求するも、「登記中」。
調べてみると、当該マンションは、昭和51年新築の500戸強の巨大マンションのようで。
土地の一部が敷地権化されてないとなると、こりゃ常に登記が入ってるわな。
大急ぎで、買主Xさんにその旨伝え、84番4の権利関係が確認できないと決済は延期するしかありません、と伝える。
なかなか真意が伝わらず、決済が中止になると、Xさんもパニックになったようで、
「司法書士なんだからどうにかしてくれ」
今住んでる家を売るのは決まってるし、引っ越しできなければ、住むところがなくなる。どうすんだと。
いや、それはそうなんでしょうけど・・・。
決済まで、あと10日。
気が向いたら、つづく・・・